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閑話休題1 大槻教授のど正論 [と条例問題]

 世間的には「プラズマおじさん」 として有名な、物理学者の大槻教授に、彼のブログの読者が 「非実在青少年の件について、どー思いますう?」 という質問を送ったらしい。
 いや、たいした人だ。

 で、その回答が実にど正論で、ちょっと面白かったので、紹介を。

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>私はもちろん都の条例など反対です。
東京都、青少年保護(育成)条例など、『健全な青少年の育成』に役立つでしょうか?アニメや映画メディアの性や暴力を排除する、というのです。このような規制で青少年は保護された健全な育成がなされるのでしょうか?
>それを言うなら、多くの青少年が仕事もなく放置されネットカフェを転々として、あげく体調を壊している実態を改善すべきです。
>『保護育成』すべきは、性刺激からではなく貧乏からです。

大槻義彦のページ
http://ohtsuki-yoshihiko.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-c6c1.html
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 見事なまでに素朴な視点での、ど正論。
「別に科学的な根拠もないジャナイカ、科学者のくせに!」
 などと言う人もいるらしいけど、いやそうでもない。
 というかこの素朴な正論は、要するに 「因果関係がカケラも立証されていない、「フィクションの害で犯罪が増える」 なんてのは、オカルトだ」 という前提があるのだと思う。
 十分以上に学的視点だ。
 むしろ大槻教授としては、「なんでそんな簡単な事も分からないんだか。火の玉だの漫画で犯罪が増えるだの、くだらない」
 というところなのではないか。

 漫画やアニメ、或いはポルノなどの娯楽と、貧困や差別主義や抑圧弾圧。
 どちらが治安の悪化や犯罪の助長に繋がるかなんて明白なんだが、後者に対処できない、したく無い為政者は、世間の目をそらすために、前者をやり玉に挙げて「ちゃんと対策しているフリ」 をする。
 歴史の教科書に載っている様な、江戸時代の頃の「○○の改革」 だの何だのというのも、中身を見るとそう言うモノ。
 とにかく支配者たる武士階級が、庶民の娯楽を徹底して弾圧し、旨いモノは喰うな、良い服は着るな、本は読むな、芝居を見るな、学問なんかとんでもない。
 要するに、何も楽しまず、何も学ばず、「ただ米だけ作ってろ、そうすれば世の中は良くなる」 という弾圧。
 それで本当に世の中が「良く」なるか? つまり、犯罪が減って治安が良くなり、人々が安心して暮らせる様になるのか?
 当然、「良く」なるわけなんかない。
 生活が圧迫され、庶民文化が萎縮して、単にいや~な感じが長続きするだけ。
 そして為政者達は内ゲバの政争に明け暮れ(松平定信と一橋派の争いとか)、暫くすれば弾圧したことすら忘れる。
 江戸時代のソレと違うのは、江戸時代の手当たり次第の弾圧と違い、対象を一部に絞ることで、「それ以外の庶民を煙に巻こう」 という狡さがある所くらいだ。

 まあ言ってしまえば、「規制主義者のあたまのなかは、江戸時代と大差ない」 という事になってしまう。
 うーむ。言っても本当に詮無い事なんだが。

 繰り返しになるけれども、実際問題として、「世の中をもっと悪くしたい」 と思っている人なんてほとんど居ない。
 「どーせ世の中良くならない」とか、「俺が何やったって変わりっこない」とか、「世の中が良くなったところで、俺の人生が良くなるわけじゃない」 という人はいるだろう。
(正直に言うなら、僕は特にこの3番目に近い感覚をいつも持っているけれども、そのことはまず置いておく)

 問題は、たいていの人はこの、「世の中を良くしたい」という言葉の中に、無自覚にか自覚的にか、「世の中を(自分にとって)良くしたい」という但し書きを入れていることだ。
 そしてそういう人は、規制主義弾圧主義に、はまりやすい。

 繰り返しになるけれども、「自分にとって気に入らない価値観」「嫌いな文化」「反対意見を言う人間」 を、弾圧したところで、絶対に世の中は良くならない。
 最大公約数的にも良くはならないし、そして但し書きのついた、「世の中を(自分にとって)良くしたい」に届くこともありゃしないのだ。
 
 ほとんどの人間は、どんな環境にあっても、何かしらの不足を感じる。それは心の中から生まれるからだ。

 「犯罪を無くそう、撲滅しよう」 
 これは目指すべき理想の社会だ。
 けれども二つの意味で、決して実現しない理想でもある。
 一つは当然、人が居るかぎり犯罪が無くなることはあり得ないからだし。
 もう一つは、例え現在の定義での「犯罪」が全て起きなくなったとした場合にも。
 それまで「犯罪」と思われていなかったことを取り上げて、「これは犯罪になるんじゃないか?」、「いやいや、こっちこそ看過されてきた悪だ」と、「新しい犯罪を定義する」事になるからだ。
 
 同じように、誰か個人が、その内にある欲求衝動にそのまま従った「理想的社会」を完成させても、新しく不足しているモノを捻り出す。

 社会を良くする、というのは、だからそういう事ではない。

 例えば、戦争、貧困、犯罪率、テロリズム、差別主義、人権弾圧、等々の 「個々の悲劇を生み出す要因たる社会的な悲劇」を、限りなく少なくし、その上で、「個々の人間に降りかかる悲劇」を予防、又は起きてしまった悲劇へのケアが出来る社会システムを目指すことにある。
 というか、それ以外のベターな方法なんて、僕には分からない。

 「戦争の撲滅を目指すこと」は、戦争の当事者たる者達を弾圧し排除することではない。
 「貧困の撲滅を目指すこと」は、貧困に喘いでいる人たちを弾圧し排除することではない。
 「テロリズムの撲滅を目指すこと」は、テロリズムに走りうる人たちを弾圧し、排除し、或いはアフガニスタンやイラクに軍を送り爆撃を繰り返し、死体の山を積み上げることではない。
 「性犯罪、暴力犯罪の撲滅を目指すこと」 は、それらの描かれたフィクション、それらを好む人たちを弾圧、排除する事ではないし、その上で更に言えば、性犯罪、暴力犯罪を起こしてしまう人たちを、弾圧し排除する事でもない。

 漫画や小説や、アニメじゃないんだから。
 現実の世界には、「退治すべき諸悪の根元」なんて存在しない。
 人の営みの中の様々な軋轢の中からわき出すモノ、生まれてしまうモノが、悲劇であり、ときには犯罪という形になる。
 目に見える何か、気に入らない何かを諸悪の根元に仕立て上げようとしても、無意味だ。
 そんな考えこそ、漫画や小説に影響されすぎだ。

  繰り返しになるけれども、徹底して殺し尽くし焼き尽くし抹殺しつくしでもしない限り、「気に入らない誰か」 と同じ世界同じ社会で生き続けるのだから。
 
 女性に対する性犯罪、暴力犯罪を無くすために必要なのは、「女性に対する暴力、性暴力の描かれたフィクションを無くすこと」では無く、まずは社会環境を整え、予防の為のシステムを作り、そして被害女性と加害男性双方へのケアが出来る体制を作ることだ。
 被害者にケアが必要なのは言うまでもない。
 けれど、同時に加害者もケアしなければ、再発防止は出来ない。
 加害者になりうる人が、実際の加害を起こさない社会環境を作ること。大槻教授が指摘しているように、失業や貧困の問題を解決するというのはまさにそういう事でもある。
 気軽に、実に他人事のように、「レイプ犯なんかチンポ切っちまえば良いんだよ!」 なんてのは、所詮ネットの野次だから大目に見られるバカ発言なのであって、実際にシステムを作る責任ある立場の人の意識レベルが、その程度のモノであったら困る。
 チンポを切ろうが、社会的制裁を加えようが、彼は同じ社会で生きていく。
 ポルノを無くそうと、買売春を厳罰化しようと、男の性欲が無くなるワケじゃない。

>その暴力的な力を法で押さえ込めると考えるのは、「空腹禁止」と法に書いたら腹が減らないと思い込むほど空虚な絵空事である。
 http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51420496.html

>自分の中で二元論的な対立構造を“構築”して、想念の中で“敵”を増やし、呪いのコトバを投げ続けていって作り上げた内的世界。
>それは多分、 “楽園” とはほど遠い位置にある。
>恐らくソレを言い表すとするならば、“煉獄” だろう。
 http://heboro.blog.so-net.ne.jp/2005-08-04

 気に入らないモノ、不愉快なモノを、どれだけ目の前から排除したところで、消えて無くなりゃしないのだ。


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 基本的にまたいつも書いていることと同じなので、あとは他に見かけた記事など。

●本とマンハッタン
イケないことはいくらでも非実在キャラでどーぞ?Why it's wrong to ban non-existent sex with minors
http://ow.ly/1qhxk

 アメリカのポルノ文化、気質と、日本のポルノ文化、気質との違いなどを考察している記事。
 ポルノ雑誌編集者ラリー・フリントと、その活動を擁護したメディアの持つ、「表現の自由」に関する確たる意識のありようは素晴らしい。



■非実在論争と敵意の行方
http://anond.hatelabo.jp/20100325183056

>ツイッターで「今回の規制はアメリカの外圧だ」という話も何度もリツイートされたが、単に反米感情を煽っているだけのような気がしてならない。要するにアメリカが嫌いなだけでしょ。
>外国の議員なり外交官なりが日本の関係者に何らかの要求をすることは、外交において普通にあることであろうし、それが発言者個人のレベルかどうかにも依る。ちょっと懸念を示しただけで「外圧」になるんだったらそもそも国交などできないでしょう。
>仮に「外圧」があったとしても、その結果として行動を選ぶのは日本人なんだからこれは日本の問題なのであって、アメリカは悪くないのだ。

 陰謀論は、基本的にエンタメ程度として捉えておくが吉です。


月よお前が悪いから
http://d.hatena.ne.jp/artane/20100326

 規制推進派の、プロパガンダ戦略についての考察。
 実際の戦争に限らず、言論戦もどこかでプロパガンダ的なモノにはなるものだと思う。
 意図して無くても主張のために細かいところを落として書かなきゃ成らなくなることもあるし、言い回しによってはレッテル貼りに成りかねないところもある。
 要は、個々の人たちが、そういうところに惑わされたり扇動されたりせずに、きちんと判断できることなのだろうけれども、と。


●条例第18条の2第2項に規定する自主規制団体からの聴き取り結果
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/09_singi/598/siryou3.pdf

 一部、抜き出しますけど、こんな 「『サルまん』で描いていたネタ」みたいな事を、この人達、素の顔してやってるんですね。
 
・乳房が大きく卑猥であり、男性器が白抜きとなっている
ものの、気持ち悪い。集団でのSEX描写も刺激的で、指
定やむなし。

・巨乳女性のオンパレードで非現実すぎて、卑猥さはあま
り感じられない。しつこい巨乳と性交場面でかえって閉口
してしまう。指定非該当

・性交シーンは多いが、絵がコミカルであるため、卑猥度
は低く感じる。指定非該当

・女性の陰毛が具体的に描かれており、擬音も多く、指定
やむなし

 「要するに、あんたらの股間の具合如何やんけ」
 一人が、「デカパイが多くてエロイ! 許せない!」 と言えば、別の一人は 「現実的ではない巨乳など、エロくない」 という。

 まあ、これ、ツッコミ始めたらきりがないのですけれど、要するに 「規制がされていない、野放しだ!」 という声と、「今でも規制はされている」 という声の齟齬は、こういうところにあるわけです。
 実際には、こんなアホみたいな審議で、恣意的で主観的、明確な基準のない 「有害図書指定」 をテキトーにやっていて、それで作家や出版社は首をキュっと締められている。
 こんなの、作家にしてみれば死活問題です。
 
 けど、結局こんなアホなやりとりを密室でやっていても、世間の人たちはなーんも知らない。
 なんもしらないから、『何も』やってない! と、思ってしまう。
 
 本当は、今回の改定案が是か非か以前に、このこと自体、、完全におかしいし問題があるんですけどもね。

●「女性に対するあらゆる暴力の根絶を目指す」
http://www.gender.go.jp/danjo-kaigi/boryoku/houkoku/torimatome.pdf

 メディアの件もそうなのだけれども、この中では、買売春において、女性は皆、「哀れな性暴力の被害者」という決めつけがある。
 そういう側面が現実に少なくないだろう、というのは勿論ある。
 たとえば、したくもないのに、借金であるとかの経済的理由で売春をせざるを得ないとしたらそれは何かしらの社会的ケアがあった方がよいだろう。
 けどそれは、性の問題ではない。
 選択肢の問題だ。
 全ての買売春、性メディアでの活動が女性への性暴力だ、というのは、女性が、自分の意志で、性メディアに出ること、性産業に従事することの、自己決定権まで否定する事になる。
 これはまあ、男でもニューハーフでも同様。
 能動的選択肢としての性産業を残すと言うことは、本当は女性の性の自己決定権の保証でもある。
 それを認めないというのは、生産業に従事している女性全てへの、侮蔑であり差別だ。
「カワイソウに。あんな汚らわしいことをしないと生活出来ないのね」

 
 あ、あとおまけ。
 どこかで突っ込まれていたのだけど、「この記事、表現の自由と内心の自由がごっちゃになってんぞ」というのは。
 まあ確かにその通りだった。
 気をつけようねー。

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